2.扇面画における伝統と創造ー室町絵画史の探究へ向けて一1.日本のシュルレアリスム絵画におけるマックス・エルンストの影響研究者:姫路市立美術館学芸員速水研究目的:日本近代洋画の展開は,西洋絵画の様々な表現様式の受容によって特徴づけられるが,20世紀の西洋絵画史における相次ぐ新しい表現の誕生は,その受容を非常に複雑なものにした。シュルレアリスムに関しては特に,その作品の様式上の性格が本来明確ではないため,その受容に関しても曖昧な形で論じられることが多かったように思われる。従って,日本におけるシュルレアリスム的表現の受容のあり方を明確に理解するには,より個別的,具体的に影響関係を指摘することが必要であろう。この研究において特にエルンストを採り上げるのは,エルンストがシュルレアリスムの本来の理念に沿った様々な表現技法を用いた代表的な画家であるとともに,日本の画家に対する影響力が最も大きい画家の1人であると思われるからである。特に,シュルレアリスム的表現を早い時期に試みた日本の画家,福沢一郎,古賀春江らの絵画にはエルンストの影響が明らかに見てとれる。エルンストの絵画独特の表現技法,その背後にある考え方が,どの程度まで理解され,どのような形で影響を与えたかを調べることにより,日本近代絵画において一つの重要な流れとなったシュルレアリスム的表現のあり方,その問題点が明らかになると思われる。研究者:武蔵野美術大学助教授佐野みどり研究目的:中世末から近世初にかけての扇面画作品が,室町時代絵画史を考える上で,重要な論点を提示していることはつとに認識されている。南禅寺扇面画等の著名な遺品の他,近年新出の扇面画遺品が相次いで世に知られるようになった。これらは,同様に室町時代と考えられるやまと絵屏風の発見紹介とともに,室町絵画史再考を活性化するものである。これら新出扇面画の分析は,源氏絵・花鳥図・人物図といった主題の枠組を越え,採択課題研究目的の概要(1)美術に関する調査研究-24 -豊
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