鹿島美術研究 年報第6号
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10.東九州仏像彫刻史の研究11.鈴木春信全作品目録作成のための調査研究を図ることを目的とする。研究者:大分県立宇佐風土記の丘歴史民族資料館主任研究員(美術史担当)研究目的.. 東九州地方(大分県を中心に福岡・宮崎両県の一部を含む)は,歴史的には奈良時代における宇佐八幡宮の創建にはじまり,その勢力は平安時代から鎌倉時代にかけて東九州一円の荘園領主として発展した。また鎌倉後半以後は,そうした既成勢力と拮抗して豊後守護大友氏ら武家方の支配するところともなった。これらの支配機構を背景に仏教の上では,既に7世紀後半に白鳳寺院の建立があり,8世紀から平安時代にかけては,宇佐八幡神宮寺(弥勒寺)を中心とした寺院の造営が盛んに行われた。また,これと並行して,当該地域には早くから天台宗系山岳仏教が浸透しており,英彦山・求菩提山・国東六郷満山などの独特の仏教文化圏を形成している。さらに,鎌倉時代後半以後は,武将達の勢力を後立てに臨済・曹洞の禅宗の浸透がみられ,多くの禅院が開かれている。本調査研究の目的は,当該地域において展開した造仏活動およびその精華としての仏像彫刻の変遷史を跡づけることによって,こうした多彩な展開を遂げた仏教文化の性格,特殊性を浮彫りにしようとするところにある。急速な地域開発の進展とは裏腹に,過疎化および信仰の希薄化が進む中で,寺院の無住化・廃寺化が問題となっている。当該地域に多く残された,貴重な文化遺産としての仏像も消滅・散逸の危機に瀕しているのが現状である。本調査研究によって,仏像の所在を確認し,現状を記録し,その歴史的変遷の跡づけを行うことの意義は大なるものがある。研究者:学習院大学教授研究目的:近世絵画史研究の基礎は,個々の作品とそれを創造した作家に関する着実な実証的研究に置き据えられるべきこと,論を侯たない。しかるに,浮世絵史上もっとも重要小林忠・永青文庫学芸員田辺智子-30 -渡辺文雄

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