鹿島美術研究 年報第6号
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22.東国の金工史に関する基礎的研究わが国の金工品の研究はこれまで梵鐘•仏具等の限られた範囲の作品研究と金石学23.中世における和歌と絵画の関係関係もこの調査が明らかにしてくれるであろう。この面からの研究は18世紀初めのヴァトーやシャルダンの芸術を考える重要な手がかりを与えてくれると思われる。ー中世武蔵の金工資料と鋳物師について一研究者:埼玉県立近代美術館普及課長研究目的:からのアプローチが中心であった。東国に於いても一部このような研究は進んできているが,鰐ロ・雲版・懸仏等より広範囲な金工資料を対象とした総合的な調査はないがしろにされてきた感がある。しかし,近年各地に於いて新たな資料が紹介されるとともに,その製作者である鋳物師集団の存在もいくつか知られるようになってきている。本研究はこれらの成果を踏まえながら,改めてより詳細な所在確認調査を行うことによって東国,殊に武蔵に於ける金工資料の基準作例を集成し,整理することを第一の目的とする。更に,これによって,近年歴史学の側から注目されている中世職能集団の一つである鋳物師の活動の実態を美術史学の立場からより具体的に解明しようとするものである。研究者:大阪大学文学部美学科(美術史学)助手片桐弥生研究目的:「景物画」の概念は,家永三郎氏の『上代倭絵全史』において,平安時代の四季絵,月次絵を対象として提唱されたものであるが,その後,武田恒夫氏によって,広く中世,近世に拡大された。しかし,それは決して平安時代のそれと同じではなく,「和歌からの発想にもとづく主情的な性格から脱却して,いわば可視的な景物を基本的な構成原理とするに至った」とされる。このように,中近世の景物画については,従来,その「可視性」のみがクローズ・アップされる傾向にあったが,近年,その主題の面からの検討が加えられるようになった。つまり,当時の人々にとって,それらの画面がどのような意味をもっていたかということである。それは又,当時の人々の絵画鑑-38 -林宏一他1名

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