28.「請来」伝承を有する密教法具の研究29. 16 • 7世紀日本絵画における古典の継承16■17世紀の日本絵画史は,中世から近世へと展開する重要な時期であることはい同時代の画家たちと同様に,西洋芸術の影響を強く受け,たとえばアール・ヌーボーと関連するといわれる「木陰」(大正11年)をはじめ,伝統的な日本画を刷新させるべく研究を重ねた。「太夫」(大正9年),「南座」(大正11年)などの暗くて主観的性格の色濃い作品群は,やはり西洋絵画の影響下にあった京都画壇の村上華岳らの作品と共通するもので,大正期独特の特徴を示している。今回の研究では,大正期の京都で活躍した荻祁の下絵,伊藤小披の下絵など,また東京で活躍した小林古径の下絵などを中心に調査して,東京と京都の近代日本画の下絵の比較検討,さらには日本と西洋の下絵類の比較を行い,下絵自体がもつ「表現力」を検証することで,「下絵とは何か」という問題を追求したい。研究者:奈良国立博物館学芸課文部技官関根俊一研究目的:わが国の密教法具に関する従前の研究は,仏教史上における事相面からの考察や,いくつかの特殊例についての,形成的,図像学的な考察が主体で,密教法具全般を含んでの形式面を軸とした編年的研究は,必ずしも充実したものといえない。その大きな原因の一つには,密教法具に編年の上で参考にすべき,紀年銘品や,基準的作例が少ないことがあげられる。これは,特に平安時代の遺品の編年に顕著であり,根本形式ともいうべき「請来様」遺品の実体の解明が望まれるのである。本研究は,前述したように,「請来」伝承を有する遺品を,文献・形式の両面から精査し,草創期密教法具の実体を明確にするのが所期の目的であるが,それによって伝存する遺品の系統的な整理が可能になるものと思われる。研究者:東京国立文化財研究所情報資料部主任研究官(文部技官)研究目的:うまでもない。近世絵画の成立過程の検討は当該時期の絵画史の大きな課題のひとつであり,本研究の目的はこの課題に対し,ここに掲げた研究課題を一布石として今後鈴木廣之-42 -
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