鹿島美術研究 年報第6号
66/304

39.英文による日本美術史・建築史の用語辞典の編集質として持った作品の「大きさ」の実現の様式である。その様式は近代の「個人」の英雄性,悲劇性をテーマとして実現するものであり,それは私は,19世紀の都市整備計画に組み込まれて活性化した建築装飾に始まり,記念碑に極まったと考えている。この「大きさ」は私見によれば,従来考えられていたフランスという環境とは異なり,ミケランジェロの影響(これは既に指摘されている)に加え,プリュッセルという環境がロダンに準備したものである。そこでロダンが滞在していた当時(1871年〜77年)に彼が眼にしたであろう歴史的彫刻作品や,フランスから大規模な建築装飾計画実施に来ていた彼の師カリエ=ベルーズ,共に働き制作したジョセフ・ヴァン・ラスブールなどのベルギーの同時代の彫刻家の作品,そしてロダンが実際に制作した建築装飾の作品や寓意像を,その時代の環境の中に総合的に関連させて見るならば,ロダン様式の形成過程の最も重要な部分の一つが解明され,ひいてはロダン芸術の本質の再検討に大きな価値を付加できると考える。研究者:東京工業大学建築学科平井研究室研究目的:近年世界各国の日本伝統芸術に対する関心は深まる一方で,外国人研究者の層も厚くなり,テーマも多方面にわたっている。このため日本美術史・建築史についての英文による用語辞典は必要欠くべからざるものだが,今までに出版されているのは簡単なハンドブックだけで,海外の研究者は大変不便な思いをしてきた。この辞典が完成すれば,海外の研究者や日本の研究者にとって大変な福音となるであろう。日本美術研究の盛行は,日本の研究者が海外での研究発表や講演の機会を増大させているが,そうした場合にも,日本の伝統・風土に根ざした美術史上の用語をどのように翻訳すればよいか,常に問題となってきた。この辞典が完成すれば従来まちまちだった美術用語の訳に一つの基準をもたらすことになるであろう。さらに日本建築・美術史の用語は,日本人の精神・文化・生活と分かち難く結びついているため,単に美術史研究のみならず,歴史・哲学・宗教・民族・文学などあらゆる分野の日本文化研究に役立つことになると思われる。50 -ペーレント・メリー・ネーバー

元のページ  ../index.html#66

このブックを見る