0動物文様としては,1.江戸初期の肥前磁器の文様研究者:佐賀県立九州陶磁文化館資料係長大橋康―研究報告:肥前磁器は秀吉の朝鮮出兵の際に連れ帰られた朝鮮の陶工によって焼成に成功した。それは17世紀初頭のことである。この初期の段階の窯で焼かれた製品の種類は,染付を主として白磁などがある。以後,急速に発展し,17世紀前半の中で多彩な意匠の染付磁器を生み出した。これらを普通「初期伊万里」と呼んでいる。この輸出時代に入る前の肥前磁器の意匠が,どのように生まれたのかについては,中国磁器や中国の絵手本などを写したものと見る見解が強かったが,それを具体的に検証する作業はほとんど行なわれていない。そこで17世紀前半の肥前磁器のうち,操業年代が比較的短かく,しかも意匠の種類が豊富な窯ノ辻窯(佐賀県山内町)の出土品にしほ‘って文様の分析を試みた。窯ノ辻窯は1630年代から1640年代に操業したとみられる。文様の分類作業は窯ノ辻窯の主力製品である皿と碗に対して行ない,皿では見込,内側面,外側面,高台内,碗では外面主文,外面口縁部,外面腰部,高台内,見込,内側面に分けて,それぞれの文様要素の分解をを行った。皿の見込,内側面,外側面の文様をみると次のような種類がある。0植物文様としては,菊,牡丹,梅,竹,松,柳,藤,プドウ,瓢筑,瓜,唐草,銀杏,石櫂,桐,桜,椿,蓮,あやめ,葦,すすき,蘭,芭蕉,椋欄,花丼,草花,花,樹木,水草,抱著荷,野菜鹿,エビ,魚,貝,蝶,人物R事物,自然文様としては,宝,如意頭,十字文花,唐花,九曜,八卦,捻文,巴,丸文,幾何文,吉祥文字,短冊,落款印,家,橋,旗,網干,柴束,扇面,羽根,山,水,雲月,風景,放射状文,区画文,区画間文以上のような文様要素の項目をさらに表現の違いなどから細分してみると,その種類は547種(高台内を除く)に及ぶ。この文様要素の組合せで約700種の意匠のうち,碗の見込,内側面,外面主文部分,外側口縁部,外面腰部の文様をみると次のとお371種が見込に描き込まれたものである。鶴,鳳凰1.調査研究の助成-59 -雀,鶏,雁,兎,雨龍獅子,キリン,
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