鹿島美術研究 年報第6号
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0植物文様としては,菊,牡丹,梅,松,竹,藤,ブドウ,りである。花,樹木R動物文様としては,鷺,鳥,工ビ,蝶,人物0事物・自然文様としては,宝,如意頭,唐花,巴,幾何文,吉祥文字,家,橋,船,山,水,雲,月,放射状文,区画文,区画間文碗の場合,高台内を除く文様要素総数は196種であり,この文様要素の組合せで約225種の碗が作られている。このうちの135種は外側面の主文部分に描き込まれている。皿の主文部文が内側見込であるのに対して,碗の主文部分は外側面にあることを示す。文様要素の種類は碗の方が少なく,碗の文様種類には前述の皿の分類項目以外の,新しい文様種類はみられない。皿の植物文様で種類が多いのは,菊,牡丹,梅,竹,藤,唐草(菊唐草と牡丹唐草を含む),銀杏などであり,これらは皿の内側面文様としても多く使われている。碗では菊,梅,松,竹,プドウ,唐草,蘭,花丼文などが主要な文様である。皿の動物文様で種類が多いのは,鷺,鶴,鳳凰,鶯,雀,雁,兎,蝶,人物などである。碗の場合には蝶が多い程度で,動物文様の使用は少ない。皿の事物・自然文様としては,宝,如意頭,幾何文,吉祥文字,家,山水,雲,区画文,区画間文などが多く用いられている。以上,窯ノ辻窯から出土した1万5千点以上の陶片(底部片から個体数を推定すると皿は4,990個体,碗は3,135個体)を分類した結果,得られた文様要素の種類について概略を述べた。この結果をもとに各文様がどのように生成したかを研究することが,重要な課題として今後に残されたが,中国の陶磁器や絵手本からではなく,日本の意匠と推測できるものをあげてみると次のとおりである。① 菊花一輪を見込に描き込んだものは,その表現の違いから9種類あるが,その一部。② 藤花で馬蹄形に形作ったものは古染付に一例みられるが,これは日本の注文によるものとみられるので,藤花は日本の文様と推測される。藤花は他に,片方の房だけを描いたものなどもあるが,これらは中国の例をみないので,日本の文様であろ③ 銀杏の葉3枚を3方に組み合せた文様が主であるが,1,2枚を描くものもある。つ。蓮,蘭,花丼,草-60

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