(3) 図様の解釈一~剛鈴(4) 図様の解釈ー一まとめ平安後期に行われていた別尊曼荼羅の諸図像を集成した『曼荼羅集』において，三鈷杵，あるいは独鈷杵の繋文帯が見える図像には，尊勝曼荼羅，法華経曼荼羅，八字文殊曼荼羅，弥勒曼荼羅，千手曼荼羅，如意輪曼荼羅がある。これらの図像に共通する三鈷杵繋文帯の特徴は，それが院と院の境界として使用されていること，そして各々の曼荼羅の教主を中心に幾重にも巡らされていることである。これは金隋界曼荼羅にも共通する特徴である。ニ昧耶五鈷鈴とは，鈴身の四方に三鈷杵，宝珠，蓮華杵，掲磨という四種の三昧耶形を表したもので，それらは金剛界大日如来の四周を守護する四波羅蜜菩薩を意味している。すなわち，鈴自体を金剛界大日如来に見立てている。そして，三昧耶五鈷鈴では身部を一周するように三鈷杵や独鈷杵の繋文帯があしらわれることが多い（例，金剛峯寺鈴，護国寺鈴，高貴寺鈴）。すなわち，三昧耶五鈷鈴は金剛界曼荼羅の骨格を抽出した立体曼荼羅であるといえよう。金剛界曼荼羅の根本経典『金剛頂喩伽略出念誦経』や，別尊曼荼羅の所依経典には，曼荼羅を造立する際に院の境界に三鈷杵などの金剛杵の繋文帯を表すように説かれている（それを金剛騰〔騰は垣，屏，囲いの意〕という。以上から三鈷杵繋文帯は曼荼羅の教主を中心に巡り，教主の浄域を示す結界の一種であると言えよう。すなわち，螺細八角須弥壇は何らかの曼荼羅的な内陣構成を有する堂宇に置かれ，そしてこの壇に安置された仏像は金剛騰の中心に座することになるから，その曼荼羅の教主であることになる。螺細八角須弥壇の束の鈴は天蓋を有し，蓮華座にのることから，何らかの仏・菩薩を象徴していると考えられる。さて，先述のようにこの鈴の特徴のひとつは身に掲磨が表されていることがある。このような鈴には先に挙げた三昧耶五鈷鈴がある。三昧耶五鈷鈴は自体が金剛界大日如来を象徴している。したがって，螺細八角須弥壇の束の鈴は金剛界大日如来を意味していると考えることができよう。螺細八角須弥壇の図様の解釈について残された問題について触れておこう。まず，格狭間の鏡地に表された迦陵頻伽については先の「孔雀文格狭間の研究」に-78-
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