鹿島美術研究 年報第7号
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術館である。フランス美術館総局は,パリの国立美術館のほか,約1,000館あるフランスの地方美術館の監督,管理,諮問,監査,財政管理,指導,助言をおこなうほか,そうした美術館を連携させ,国家的規模で能率的に運営していく行政管理の任務を持つ組織。1945年に最初は文部省内に発足,1959年の文化省の設立とともに文化省内に移管している。総局は美術館課をはじめ,渉外広報,教育,保存,資料,検査,図書館古文書館,備,人事,厚生,第一会計,第二会計,地方美術館監査官の13課に分かれ,美術館行政を司るタテの組織として機能するが,各美術館の意向と自主性については十分に尊されている。また,このタテの組織とは別個に,1895年に設置された国立美術館連合というヨコの組織がある。こちらの方は,実際の作品購入,寄贈,遺贈等によってコレクションを増やす役目のほか,展覧会の企画や,国立美術館の出版物,カタログの編集,発行,販売,写真資料の収集,記録,分類,利用サービス等の活動をおこない,独立の会計を持って,連合の利益を目的とする活動をおこなう。こうしたタテの組織は日本にはないが,ョコの組織として美術館連絡協議会,全国美術館会議等がある。道内では,現在4館ある道立美術館は,在札の道近美を中心に,それぞれ別個に収集,展示,普及活動を行っているが,来年帯広館が開館し5館体制を迎えるにあたって,ますますその連携が必要とされている。コレクションの活用,作品収集事務の一元化,人事交流といった点で,総局制や連合はひとつの示唆を与えるものと思われる。10.予算についてフランスとアメリカの主要美術館の年間予算,職員数,作品数,観覧者数,面積,組織等については,東京都新美術館建設計画委員会の報告書をもとに別表を作成,これを分析することにした(資料②)。フランスとアメリカでは入手資料の精度に差があるし,歳入,歳出の項目のたて方にも違いがあり,小規模美術館についても資料がないのであまり細かい分析はできないが,公表されている数字から少し考察してみたい。ルーヴルの年間予算60億円の歳入内訳を比率でみてみると,文化省予算が38%で最も多く,次にカタログ販売収入32%,入場料収入27%,スポンサー3%と続く。これを予算規模は異なるもののメトロポリタンやホイットニー美術館の歳入比率と比較してみる。メトロポリタンは,ニューヨーク市の補助金で,保安警備及び維持費の約半分と光熱費分をまかない,これが歳入全体の22%である。これ以上に高い23%という_ 92

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