鹿島美術研究 年報第7号
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比率で,贈与及び助成金の歳入があり,さらにメンバー・シップ会費が17%,基金運用が17%,入場料が15%,その他6%と続く。ホイットニー美術館の場合は,寄附及び助成金が48%と半分近くをしめ,証券,投資運用といったいわゆる財テクで18%,メンバー・シップ会費12%,入場料12%,事業関係9%,その他1%である。このように,フランスとアメリカの3館の歳入内訳を比べてみると,いわゆる税金(予算)に頼る比率が,ルーヴルの4割に対し,メトロポリタンで2割,ホイットニーは0である。もちろん,メトロポリタンやホイットニーの助成金の中に公的資金がいくらか入っていることは推察されるか,そうした助成のはたらきかけも,美術館のデベロップメント・オフィサーが積極的にはたらきかけをすることによってはじめて歳入に結びつく部分である。また,メンバー・シップ会費といった歳入項目も,ルーヴルには見あたらない項目でありホイットニーの場合にはさらに,財テクによる資産運用までが含まれている。公的資金,スポンサー,寄附,助成を除いた部分が美術館自身で稼ぎ出している割合だと考えるならその比率は,ルーヴルで6割,メトロポリタン,ホイットニーで5割をしめると考えてよいであろう。日本の国公立美術館が8■ 9割がた一般予算に頼り,新聞社等スポンサーがつきやすい地域,都市に所在する美術館のみ,特別展事業を,新聞社の事業として開催してきた現状を考えると,美術館は自財源を確保すると同時に,もう少し積極的に外に財源を求める必要も考慮されなければならない。ちなみに北海道の4つの美術館の予算を予算が約9億(近美5億,旭美1.5億,函美1.5億,3億,事業費約7,000万,作品収集費1億3,000万),歳入内訳でみると,一般財源4億7,000万に対し,特別財源(収入)4,000万で,いわゆる美術館自身が稼ぎ出しているのは,全体の約8%にすぎない。函館美術館の場合でも,その比率は12%である。維持管理,作品収集を除いた事業費の枠内だけで見た場合に,はじめてその収入の比率は5割を超え,欧米の美術館並みになる。日本の公立美術館が,東京都美術館を皮切りに,その当初美術公募団体への貸館の歴史を歩み,さらには新聞杜事業部にその多くを頼り,美術館学芸員による自主的な学芸活動がきわめて弱いとされてきたのは,こうした財務体質にも原因があると思われる。アメリカの美術館は,非営利団体としての公益法人の立場をとり,その財政基盤を援助助成はもとより,メンバー・シップ会費制度,財テク等,多方面に求め,その活1億),近美5億の内訳が(維してみると,4館あわせた93

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