鹿島美術研究 年報第7号
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⑩ 鈴木春信全作品目録作成のための調査研究(中間報告)研究者:学習院大学教授小林永青文庫学芸員田辺昌子研究報告:本研究の初年度である平成元年度においては,東京国立博物館,慶応義塾大学図書館,MOA美術館において,春信の版画を直接調査,許される範囲で一部を撮影し,国内に所蔵される主要な作品について,貴重な知見と大量の研究資料が得られた。また,研究代表者小林は,英国ロンドン,ポーランド国クラクフおよびワルシャワ,イタリア国ジェノヴァ,米国ロードアイランドの,また研究分担者田辺は,米国諸都市の代表的美術館に於て,それぞれ在外春信作品の調査に機会を得た。木版絵本に関しては,東京,名古屋,岡山地域の諸図書館に於て調査を実施,春信はもとより西川祐信,奥村政信,石川豊信など関連絵師をも含めた作品資料の収集を進めている。一方,小林が過去に集めた写真資料をもとに,田辺収集の資料,及び出版物に掲載の写真資料を合わせて,既に知られている春信作品についてはほぼ全体にわたって,ファイリングが進められつつある。上記の活動を通じ,画風の変遷,制作年代,異版,複製,偽作等に新しい解釈が生まれつつあり,いまだ報告されていない春信の版画作品が少なからず見出されるなど,予期以上の成果が上がっている。春信作品に関する分析,検討に重点をおいていきたい。本研究の最終報告は来年度末になされる予定である。第2年度には上記初年度の成果を基礎に,資料収集のさらなる充実を図り,個々の忠-108-

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