欠李欠欠⑫ 金代絵画史研究(継続)研究者:東京大学東洋文化研究所助教授小川裕充研究報告:昭和63年11月10日より28日まで,アメリカ各地の美術館に散在する金代のものと称せられる絵画作品群と,その周辺の北宋後期・南宋・元時代の関連作品群について調査研究を実施し,多大の成果を挙げることができた。昭和63年度調査の対象とした主な在米金代伝称作品は下記の通りである。太古遺民江山行旅図巻他1点ネルソン・ギャラリー(キャンサス・シティー)また,平成元年11月10日より24日までの2週間,台北故宮博物院所蔵の金代のものと称せられる絵画作品2点の他,北宋・南宋・元時代の関連諸作品の継続的な調査研究を実施し,全世界に散在する金代絵画の個別伝称作品とその関連作品群の実査がほぼ完成した。平成元年度調査の対象とした主な在台金代伝称作品は下記の通りである。名眠山晴雪図武元直赤壁図巻これらの作品群中,今回の調査研究に基づいて,確実に金代のものと認めてよいという結論に到達した作品は,王庭笥「幽竹枯嵯図巻」(藤井有隣館),(伝)李山「山水図」(フリーア・ギャラリー),武元直「赤壁図巻」(台北故宮博物院),欠名(濾南平夷図巻」(ネルソン・ギャラリー)の4点のみにとどまる。そうではない作品のうち,近年,金代のものとされて脚光を浴びた「眠山晴雪図」(台北故宮博物院)は,北宋最末期から南宋最初期の郭熙の弟子の世代の作品と考えられる。また,「渓山無尽図巻」(クリーヴランド美術館)については,なお継続的な考察が必要と思われるので,ここでは結論を留保したい。さらに,以上の4点以外の金代のものとされる作品には,金代絵画とは無関係の後代の作品が相当混入していると結論される。では,上記の4点の作品は,何故に金代のものと認められるのであろうか。これらの作品のうち,前二者の王庭笏「幽竹枯磋図巻」・(伝)李山「山水図」は,文人画や山水画の正統に連なる作品であり,後二者の武元直「赤壁図巻」・欠名『濾南平夷図巻」名寒林行旅図他2点メトロボリタン美術館(ニューヨーク)山風雪杉松図巻他2点フリーア・ギャラリー(ワシントンDC)名渓山無尽図巻クリーヴランド美術館(クリーヴランド)-113
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