}ゴ七=子云貝⑰ 東国の金工史に関する基礎的研究――—中世武蔵の金工資料と鋳物師について一~研究者:埼玉県立近代美術館普及課長町田市立博物館研究報告:1.調査の目的わが国の金工品研究は,これまで梵鐘•仏具等の限られた範囲の作品研究と金石学からのアプローチが中心であった。今回,ここに取り上げた東国地方の金工品においても,一部個々の資料についての研究は何人かの諸先学によって地道に進められて来てはいるが,鰐ロ・雲版・懸仏等も含めたより広範囲な金工資料を対象とした総合的な調査は未だ十分になされていない状況にある。しかし,近年各地において博物館や市町村史等による調査が実施され新しい資料が紹介されるとともに,その製作者である鋳物師集団の存在もいくつか知られるようになってきていることも事実である。本研究では,こうした従来の成果をふまえながら改めて東国,とりわけ武蔵地方における中世金工資料の詳細な所在確認調査を行い,今後の研究の基礎資料となり得る基準作例の集成・整理を完成させることを第一の目的とした。また,さらにこれによって近年歴史学の側から積極的に進められつつある中世鋳物師集団の活動の実態についても,美術史学の立場から実物資料の確認と検討に基づくより具体的な解明を試みようとしたものである。2.調査の内容今回の調査研究にあたっては,香取秀真・木崎好尚・坪井良平・稲村坦元・久保常晴等の諸先学の研究成果をはじめ,「新編武蔵風土記稿」等の地誌や古記録並びに近年続々と刊行されつつある該当地域の県史や市町村史等を参考にしながら,文献資料による資料の検索を行い,あわせて林,加島両名が新たに実地調査で確認した資料を加えた「中世武蔵の金工資料」のリストと調査カードを作成することをまず基本的な作業とした。調査の対象は,梵鐘・雲版・鰐ロ・磐・鉦鼓・伏鉦.盤子等の梵音具をはじめ密教舎利塔・経筒など中世に見られる金工資料の大半を視野にいれ,紀年銘を有する現存作例に限ることとした。法具,錫杖・華覧・華籠・幡・水瓶・湯釜•仏銅鉢等の仏具類並びに仏像・懸仏・鏡・林宏勝加島-136_
元のページ ../index.html#162