0伝記・評論等の欧文原典の探索。0一度日本に将来され,海外に流出した作品の探索。「77.ミレーの家(バルビゾン)」として特別陳列されていることが判明した。本作はと黒田鵬心の共同経営の会社,日仏藝術社を発足させ,それを母体として展覧会を営した。この間開いた展覧会は14回を数えた。デルスニス及び日仏藝術社が将来したバルビゾン派作品のうち,所在が判明しているものは,コロー「オルレアン風景」(ブリヂストン美術館蔵,油彩),ミレー「冬」(個人蔵,パステル:山梨県立美術館蔵「冬」と同構図)などがある。また展覧会の時点では買い手が付かず,海外に放出されたものも多くあるが,そのうち展覧会図録等の図版により作品を特定できるものとしては次の2点が特筆に値する。ミレー「夏(ケレス)」(ボルドー美術館蔵),及びミレー「冬(凍えたキューピッド)」(山梨県立美術館蔵)である。銀行家トマから依頼を受け,ミレーが1865年に制作した『四季』連作を構成する,この油彩画2点は,昭和3年4月に開催された「仏蘭西美術展覧会」に同時に出品されていたのである。シャルル・ヴィルドラックは大正13年から定期的に作品を将来,それらの作品はその都度,中央美術社主催で「フランス大家新作画展」と銘打って展観された。これらの作品のうち,今日所在が判明しているバルビゾン派作品を掲げると,クールベ「雪景」(プリヂストン美術館蔵,油彩)やミレー「バルビゾンのミレーの家」(個人蔵,デッサン)などがある。このデッサンは,昭和5年「松方氏蒐集欧州絵画展覧会」に出品されており,そのため,永らく同氏が我が国へ将来したものと見なされてきた。今回の調査により本作が大正14年の「中央美術社主催仏国現代大家新作画展覧会」にヴィルドラックが将来したものである。最後に,これまでの調査から新たに生じた検討課題を次に挙げる。0画集や雑誌に掲載された図版の出典,並びにその変遷の情況。この研究は当初の計画のようやく半ばに差し掛かった所であり,基礎的な資料の調査は未だ半数を残している。今後更に資料調査・整理を続け,最終的に考察,まとめへと向かわねばならない。因みに第2年度の助成は残念ながら受けることができなかったが,次の機会に復活を期待しつつ,現在までの成果を取りあえず報告する次第である。-162-
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