⑰ 鎌倉時代における宋代浄土教絵画の受容について研究者:東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程研究報告:本研究は鎌倉時代における宋代浄土教絵画の受容の一端を明らかにしようとするもので,主として日宋文化交流に関する文献資料の収集,わが国に現存する同種の絵画の調迩などの基礎的作業を行なった。ここでは京都・金蓮寺蔵阿弥陀如来画像(図1)をとりあげてその概要を報告したい。本図は南宋紹興七年(1137)に没した喩弥陀思浄の箪になり,南宋嘉定十年(1217)前後に入宋した勝月房慶政により請来されたと伝えられるものである。(参考文献像」『塚本博士頌寿記念仏教史学論集j昭和37年2月)ー.伝来本図の軸裏上部には,延文己亥年(1359)付けで定山祖禅から浄阿に宛てた次のような譲状(図2)が貼付されている。「喩法師弥陀像相伝西山勝月上人渡宋感得ー音院法院済助上人悉皆付属弟子相伝之報恩院禅定殿下依念仏行者法印定空庵主自殿下拝領定山庵主伝定山定山奉渡浄阿上人「金蓮寺二代」為後勘所志歳月也延文己亥正月中吉この譲状は現状で軸裏一杯に貼られ,紙幅に多少の切り詰めがみられるが本文は完結している。しかし祖禅の落款に印章を欠くことから譲状の正本は別に存し,これは写本と推測される。島田修二郎「喩弥陀思浄とその阿弥陀洞院摂政殿息奉渡此像祖禅」図1阿弥陀如来像吉村稔子金蓮寺-188-
元のページ ../index.html#214