鹿島美術研究 年報第7号
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4.以上に加えアクロA.赤像式壺絵の基本の精緻な調査には最適であった。個々の破片の写真撮影に当たり,光漉の角度を変えることにより絵付技法の一端を視覚化出来た(図1,2)。尚,原則として各破片の最大幅と厚みを測定した。ポリス(アテネ)出土陶器に関しては,現在絶版となっている60年前のE.ラングロッツの研究成果刊行以来まとまった調査研究がなされていない事実に鑑み,新しく測定,写真撮影が必要と考えられために調査を行った。II.調査結果について最終報告には未だ時間を要するが,「〈アッティカ製赤像式壺絵研究資料〉ーーデクロポリス(アテネ)出土アッティカ製赤像式壺絵調査報告I」として,大阪市立大学文学部紀要r人文研究』第41巻に報告出版し,加えて以下のような所見を得た。赤像式であれ,それに先行する黒像式であれアッティカ製壺絵の原理は単純明解である。古来アテネは良質の陶土の産地であったが,それは肌理が細か〈鉄分を比較的多く含んだ陶土であった。こうした陶土は焼き上がると赤橙色を呈する。古代アッテイカの陶エたちは,この赤橙色の土台に対し,基本的には単色,それも黒色の施釉を-244-図2図l

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