⑤ 欧米の主要美術館における観客への“サーピス’'情況の実体研究者:東京国立博物館学芸部企画課長研究報告:はじめにべき姿を再検討する作業を既に始めている。それには,とかく名品を“見せてやる”式の押付けがましい陳列方法を改め,将来の生涯学習の時代へ向けて,多くの人々に参加してもらう「美と知識と憩」の場を提供する館とならなければならない。施設の面から云えば,最も重要な“平常陳列”の体系を崩すことなく,特別展を開催することができる新しい建物の建設も必要であろうし,貴重な所蔵品を寄贈して下さった方々の顕彰室なども考慮しなければならない。このような事業には当然膨大な予算が必要で,ー朝ータに実現できるものではない。一方,従来わが国の博物館や美術館が欧米のそれらに比べて最も立ち遅れていた面に“観客へのサービス”ということがある。陳列された個々の作品に対して題箋の他に解説や説明板を掲示して,鑑賞や理解を助けることもその一環であろうがもっと積極的に教育・広報活動・普及に力を入れなければならず,売店の充実なども重要な課題である。それらに資するべく,鹿島美術財団の補助を得て,欧米にある主要美術館の現状と計画・実施の実体を視察することができたので,概要を報告する次第である。広報・教育活動この課題は,わが国では多くの場合“普及”というより包括的でやや曖昧な言葉で表現されて来たが,観客に展覧会の企画とその内容をより良く理解してもらうためには,広報と教育という概念でとらえた方が良く,欧米の館でも“Publicity”と“Education"に別けているところが多い。本題に入る前に,来館者が最初に出くわす“案内ーInformation"について若干触れておこう。観覧料の有無はひとまず置いて,館に入ると先ず目に入るのが“案内所”である。そこで館の陳列案内図をもらい,各自の興味に従って随時観覧する訳である。いわば世界の観光名所でもあるメトロボリタン美術館,大英博物館,ルーヴル美術館にはこのデスクに多くの職員が配置され,英•仏・独・西・日・中国語などのリーフレットが置かれており,更に詳しい質問には,別に語学に堪能な職員が対応するよう1992年に,東京国立博物館は創立120周年を迎える。これを契機に博物館の本来ある総務部管理課係長河野哲郎鷲塚泰光-257-
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