鹿島美術研究 年報第7号
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Tシャツ,玩具など実に多岐にわたっている。大きい館ではそれぞれ館蔵品か特別展年の場合は,主題を限定して作品鑑貨を行い,それによって触発された芸術的な感動を鑑賞後2■ 3時間かけて作品として製作させる学級を持っているところもあり,その場では学校の先生と館の教育係が連携して指導に当っている。一般人に対しては,一日4■ 5回の時間を決めた“ツアー”や“ギャラリー・トーク”(陳列室での列品解説),外国語毎のツアーで対応している例が多い。これらの解説に当るドーセントはアメリカ合衆国の場合,クリーヴランド美術館を除いてすべて無給のボランティアにまかせている。クリーヴランド美術館は幼児から大学院生,社会人に至るまで独持の教育体系を組み,図書やスライドライプラリーも利用させながら職員や大学の専門教授がその任に当っている。またこの館にはExtension部というものがあり,館で陳列する美術品とは別個に収蔵品を持ち地域や学校の要請に応じて小規模の出張展覧会を実施しているのも注目された。上記のボランティアの養成には館員が主として当るが,大学の美術史等の授業を聴して単位を取得することを義務付けているところもあり,養成期間もサンフランシスコ・アジア美術館のように三年を要するものから9ヶ月と様々である。一方ヨーロッパではドーセントに無給ボランティアは一切採用していない。これにはフランスで聞いた「我々はアングロ・サクソンのように群をなして行動しないから」というが印象的だった。教育には上記の作品解説の他にやや専門的な,展覧会や陳列のテーマに応じた講演会が含まれるのは当然で,館に親しんでもらうためにコンサート,映画会等のアトラクションを行っている館も多い。パリのオルセー美術館では館に何度も足を運んでもらうためにツアーを数回のシリーズに分けたり,入場回数券の発売などを行っている。館内での映像の利用はほとんど無く,有っても作品やその時代の理解を助ける補助手段としてのもので,事前の貸出に多く使われているのが注目された。売店(MuseumShop) 館を訪れた人が,気に入った作品の絵葉書やスライド,関連図書を求めたいという気持になるのは極めて自然の成行である。従って各館には大なり小なりの売店が設けられている。小規模なものは場所を貸して業者に依託販売をさせているが,大規模なものはその収益が館の重要財源となっており,取扱う商品も出版物,ビデオ,スライド,ポスター,グリーティング・カードから宝石,スカーフ,ネクタイなどの装身具,_259-

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