際の使用方法。1.特に合成樹脂の種類と特性,その用法。1.支持体として用いられる様々な素材について,その種類と特性,用法。各材料や,製品についての詳しい分析や調査は,63年度の会報に記したとおり,今後まとめる事を約するとして,ここでは研修中に各国の修復家や研究者と接して得たヨーロッパの修復技術に対する考え方や問題点を筆者なりに簡単にまとめてみた。大離把な地域的分類をすれば,修復特に裏打ちについては,スペインやフランス,イタリヤ,(ソ連),では主に膠,オランダ,ベルギーではワックス,ドイツ,イギリスでは過去にはこれら両者を用いていたが,現在は合成樹脂が主流になりつつある。これは,それぞれの気候の違いと,各々異なる描画・修復技法の伝統によると思われる。膠は絵画に限らず,様々な物の接着剤として用いられてきた。容易に入手出来ることと乾燥した環境なら固着力はあまり低下しないからである。また絵画の製作過程で古くから用いられてきたことから,自然に修復材料としても受入れられてきた。しかし,膠自体にはあまり体質や柔軟性が無く,従って小麦粉(グルテン)や蜜を混入させることでこれらを調節しなければならない。この膠や混入物の純度,塗布の手際によって固着力が変化してしまうことや,多量の水を混ぜたり膠に吸湿性があるためにオリジナルの地塗層や支持体に伸縮を生じさせる危険がある。ワックスは,やはり多少の樹脂を混合させることによって使いやすさの調節が行われるが,化学的に膠より安定しており又耐湿性がある。65■70℃程度で溶解し,にも深く浸透するため,劣化して透明性を失ったグラッシ層を再生することもできる反面,オリジナルの色調に濡れ現象(暗色化)を生じさせる可能性がある。またワックスは,後年再処置が必要となった場合にこれを除去することが殆ど不可能であることも問題となっている。こうした状況の中で,これらの接着剤の欠点を補うために合成樹脂が使用されるようになってきた。現在使用されているものは,アクリルやヴィニール樹脂をもとにしている。いずれも製造過程を変えることで様々な性質の樹脂を造ることができる。ジュッセルドルフ市立修復研究所でも,近年,これまでのワックス中心の処置から,合成樹脂を主にした方法へと移行しつつある(米国ではワックスをほぼ完全に排除している)。ワックスを使用する場合でも,不純物の多い天然のエステル類に対してマイ-271-
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