(5) ロサンゼルス・カウンティー・ミュージアムこの美術館には10点近い小袖・振袖類のほか,100点近い小袖裂が収蔵されている。特に後者はもと野村正次郎氏所蔵になるもので,そのうちのいくつかは国立歴史民俗博物館所蔵のいわゆる野村コレクション中の小袖残欠の一部である。また東京国立博物館・メトロポリタン美術館にもこれと一体をなす裂が収蔵されており,これらを組み合わせることによって当初の状態をある程度復元することができる点で貴重である。以上のようにアメリカの美術館が所蔵する日本染織品の中には,国内の作品に劣らない優れた作品が少なからず含まれており,そのいくつかは絵画的表現のあり方において,国内にある作品には見られない興味ある特徴を示している。従って染織意匠と絵画の表現様式との相関関係や歴史的展開の類似点などに関心を持つならば,在外日本染織品は大いに注目すべき資料ということができる。-278
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