鹿島美術研究 年報第7号
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④ エミリア地方及びヴェネト地方のロマネスク彫刻研究者:岡山大学教養部助教授岡田温司研究目的:フランスのロマネスク彫刻にくらべるなら,イタリアのロマネスク彫刻は,わが国において,紹介,研究共にそれほどすすんだ状態にあるとは言いがたいように思われる。しかしながら,今世紀はじめのキングスレー・ポーターとエミール・マールの有名な起源論争にさかのぼるまでもなく,イタリア側の経験の重要性も疑う余地のないところであろう。とりわけ,ローマヘの巡礼路にそうエミリア地方の,あるいはまたエルサレムヘの海路の出発点であったヴェネツィアヘとつなぐロムバルディア,ヴェネト地方の教会堂とそのロマネスク彫刻の豊富な作例は,質の点でも決してフランスのそれにひけをとるものではない。さらにこのような作例の調査研究は,巡礼路が結びつけた文化の類似性,均質性と地域的特殊性との二面性をどうとらえていくか,工房は路にそってどの程度まで動き得,様式や国家の伝播はいかになされたのかという,より広い視野をひらく問題をはらんでいる。もちろん,これらの重大なテーマに短期間で十全の解答を与えるのは困難であろうが,今後に発展させうる端緒を得たいと考える。⑤ 狩野元信の画風形成について研究者:京都芸術短期大学専任講師並木誠研究目的:本研究の遂行により,狩野元信が水墨画を基本としながら次第に著彩画を描くようになってきた過程を明らかにすることができると考えられる。そして,従来,ともすれば看過されがちであった水墨画家元信と金碧著彩画家元信という元信のもつ二面性—元信以降の画家にとっては当然であるが,元信の時代にはおそらく珍しかったであろう二面性一ーについて考えてみたい。⑥ 土佐光吉の基礎的研究(その様式の考究と桃山画壇に与えた影響について)研究者:神奈川県立博物館学芸員相澤正彦研究目的:-19 -

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