鹿島美術研究 年報第7号
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⑮ 江戸後期東北地方における洋風画の基礎的調査研究⑯ 日本彫刻史「阿蘇山系およびその周辺の社寺における美術工芸品の調査研究」研究者:仙台市博物館学芸員内山研究目的:江戸後期洋風画の発生と展開について,東北地方は特異な位置を担っている。その活躍の場が多くは江戸であったにしても,洋風画の二大潮流ともいうべき秋田蘭画と川系洋風画がこの東北の地に開花したことは銘記されてよいことであろう。さて,平福百穂著『日本洋画曙光』(昭和5年)の刊行を契機として,とりわけ秋田蘭画の研究は飛躍的に進展し,以来少なからざる研究成果が世に問われてきている。また戦後,関連の展覧会も秋田をはじめ全国各地で催されるようになってきた。『図録秋田蘭画』(1974年・三一書房)の刊行から早や15年,本年新たに『画集・秋田蘭画』(秋田魁新報社)が刊行された。このように,一見すると江戸後期洋風画の研究は近年おおきな高まりをみせているとも考えられるのだが,しかしそのほとんどは極く一部の画人の研究に限定されてきた感があるのは否めない。その一方で,遺品も相当数のこっており在世当時すぐれた洋風画家と目されていたに相違ないにもかかわらず,ほとんど研究がなされなかった画人も二三に止まらない。一例として,秋田の荻津勝孝や須賀川系の画僧・白雲などがあげられよう。前者はその作品がときに展覧会に出品されることがあっても,彼の生涯およびその作品について論考されたものはほとんど無いような状況にあり,後者についても西村貞「画僧白雲とその写生図巻について」(『日本初期洋画の研究』昭和20年)が多くの作品を紹介し,かつ問題提起をしているにもかかわらず,以後同人について専門的に扱った論著を目にすることはなかった。秋田蘭画は小田野直武・佐竹曙山を,須賀川系洋風画は亜欧堂田善の研究のみに終始してきた感のある江戸後期東北地方の洋風画を,他の画人をも含めたより広範な視角から捉え直してみることは,江戸後期洋風画をより体系的に把握するための不可欠のといえるだろう。研究者:熊本県立美術館学芸員有木芳隆研究目的:従来から,阿蘇山系を中心とする信仰は,習合美術研究,山岳信仰(史)研究,古代・中世の九州の美術史・信仰史研究の面でも注目を集めて来た。しかし,これまで-29 -

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