の研究は,どちらかといえば歴史的資・史料,民俗資料によるものが主であり,美術史研究の面からの調査も行われているが,なお一部の代表的な寺社に限られている。今回の調査では,未調査の寺社・堂宇の美術工芸品の調査に重点をおき,その所在の確認調査資料の蓄積を目的とする。この調査によって蓄積された資料は,今後の習合美術研究,山岳信仰(史)研究,古代・中世の九州の美術史・信仰史・歴史研究に欠かすことのできないものとなるであろう。ぜひともこの調査を実行したいと希望している。⑰ ラコニア地方(ギリシャ)を中心とするビザンティン教会堂とその壁画研究者:東海大学教養学部教授長塚安司研究目的:ラコニア南部を中心としたビザンティン聖堂の建築の成立と壁画の図像・様式の発展系譜を明らかにしようとするのが本研究の目的である。この地区のビザンティン聖堂に関する調査研究は少ない。早くには1908年にトラケアー(R.Traquair • B. S. A. t. X)の円蓋式の聖堂を中心とした建築の調査研究があり,次いで1932年のメゴー(H.Megaw B. S. A. t XX XIII)の同じく円蓋式聖堂を中心とした調査研究がある。その後1960年以降,アテネ大学のドランダキス教授(N.B. Drandakis)等のギリシャ側の調査研究が進められている。ギリシャ側の20年間の研究は地域ごとの聖堂のモノグラフィが主である。ドランダキス教授の「マニのビサンティン壁画―聖ストラティゴス聖堂と主教座聖堂」や工科大学教授ムーリキ女史(Doula Mouriki)の「プラッツアの聖ニコラオス聖堂の壁画」などがその代表である。いわばこれらギリシャ側の研究は広い視野に立っておらず,他地域との比較研究を通じての建築,壁画の発展様相については未整理な部分を多く残している。一方,東海大学においては,ラコニアのビザンティン史蹟について,1975年以降4度に渉る原地の調査を行って来た。これらの整理研究を土台に,さらに発展させラコニア地方の,特に未だ研究が充分でない単廊式聖堂の起源や分布も含め,新たな試みとして聖堂の図像プログラムのラコニアでの確立とその独自性,壁画様式の比較研究を行う。この地方の美術作品をより広い視野から総括的にとらえ,ビザンティン美術研究に新たな問題を提示しようとするものである。本研究に於いては,原地調査,整理研究,比較研究を一貫して日本人の研究者のみ30 -
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