明朋で行って来た点に特色がある。また未発表のビザンティン美術の紹介,新たな資料の提供と同時に今後の研究に大きく貢献出来るものと考える。⑬ 源氏物語の絵画化における場面選択の歴史的諸相の研究研究者:堺市博物館学芸員井淡研究目的:本調査の当面の目的である源氏絵の場面比定の作業により,源氏絵の継承と受容の様相が明らかとなるであろう。すなわち,各々の時代において,とりわけ中世以降,物語本文に対する挿絵的・説明的性格を脱却して,絵画中心に傾いた作例が,巻子をはじめとして多く伝存している。少なくとも物語本文の一部抜粋が書された色紙と対になった画帖形式の作例は,極めて多く見られる。さらに屏風絵に至っては,源氏絵はまさに本文を越えて独立した絵画的主題の地位を確保するまでに及んでいる。今日までの長い日本の歴史において,様々な社会階層の教養を培ってきた源氏物語は,その継承の手段として主に絵画的イメージを最大限に活用してきた。その意味で,おびただしい源氏絵の主観選択,構成,景物などにわたる個々の様相の歴史的展開を考察することにより,源氏物語自体のもつ美意識や世界観が,各々の時代でどのように受容され,その時代の趣味と相侯って具体的に表現されてきたか明らかにされるであろう。またそれらの前後の時代との歴史的関連も明らかになってゆくことが予想されよう。これらの源氏絵の主題が,さらに工芸装飾などの意匠にまで広く通用されているのを観察するとき,源氏絵のもつ美術史的かつ文化的な役割とその意味についての解明が進められることになるであろう。⑲ ローマカタコンベの図像学的研究—ミューズの人から教師としてのキリストヘ―研究者:教皇庁附属キリスト教考古学研究所宮坂研究目的:カタコンベに関する研究は多数なされているが,その美術に関する本格的な研究が充分になされているとはいいがたい。「哲学者」図像あるいは「教師としてのキリスト」図像の先行研究もMarrou(1937), Testini (1963)等がある程度である。これらも,しかし,最近特に目ざましく進んでいる考古学的トポグラフィー的研究によって試さ31 -
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