鹿島美術研究 年報第7号
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(Chronological Research for "Akita-Ranga") なことがあてはまり,現代美術において写真家が果たしている責務について論じられる必要があろう。より広い視点に立てば20世紀美術において写真が与えた影騨は平面表現だけにとどまらず,より総合的に理解されなければなるまい。こうした構想の基礎的なデータづくりとして大正期以降の彫刻家と写真家の相互交流を調査することを目的とする。⑮ 鎌倉時代造像銘記の調査研究研究者:東京芸術大学美術学部教授水野敬三郎他4名研究目的:日本彫刻史を研究する上でもっとも基礎的な資料となるのが造像銘記(像の一部にきつけられたものの他,像内納入品としてのそれを含む)である。造像銘記はその彫刻の造顕理由,発願者,作者,製作年時,製作の様相等を直接的,具体的すものであり,造像事情(信仰内容,造像の経緯等),製作者(作家,流派),編年,様式展開など,あらゆる彫刻史的研究の基礎となる資料である。研究代表者水野及び共同研究者西川を含む研究グループは,かつて平安時代造像銘記に関する資料を網羅的に収集し,その成果を『日本彫刻史基礎資料集成』平安時代造像銘記篇全8巻(丸尾彰三郎他編,中央公論美術出版刊,昭和41■46年)として刊行したが,これに続いて鎌倉時代造像銘記資料の収集を完成させ,鎌倉時代彫刻史研究の真の基礎をつくりたいと考える。この時代の造像銘記を有する作品は既に500件以上が知られており,それらの多くは個々には紹介されているものの,基礎資料として役立てるにはなお不十分な報告が多く,それらの体系的な,かつ詳細にわたる資料収集が必要である。本研究は故丸尾彰三郎によって試みられたこの期造像銘記資料の収集を引き継ぎ完成させようとするもので,鎌倉時代彫刻の複雑多岐な史的展開は,この資料収集の完成とその公刊によって,解明への道が開かれるであろう。⑰ 秋田蘭画の年代設定について研究者:東京国立近代美術館文部技官児島研究目的:秋田蘭画は近世における洋風画の中で最も-37 -ものであり,独自の完成された作品

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