_クロード・モネの場合一~は注目を集めている。しかし,これまで,近代洋画の先駆,あるいは司馬江漢の先輩といった後代に対する影聾を通して評価されてきた反面,同時代的な位置づけは充分なされてこなかったように思われる。また西洋画に対する知識が,どこからどのようなかたちで入ってきたのか,といった問題も解明されていない。もちろん同時代の影響関係に対する指摘は様々になされてきたが,決定的なものはなかなか,なされ得ないでいる。そこで,もう一度小野田直武らの作品に立ち戻って,一点一点の主題や賛者を通して,なぜそのような表現が生まれたのかを考えることが有効であると考えている。それによって,同時代の文化の中で彼らの吸収したものが何であったのかを確実なものとし,どのような文化状況の中で秋田蘭画が形成されたのかもう一度とらえなおしたい。さらに,当時の人々にとって洋風文化とは,どのようにとらえられていたのかを考え,近代における洋画の運動との相違を明らかにし,近世洋風画の位置づけを行なえることを期待している。⑬ リアリズムから印象派へ研究者:京都市美術館学芸員米村典子研究目的:19世紀フランスのリアリズムの特徴は,神話や歴史上の出来事ではなく,眼前のものを見えるがままに再現することだという。しかし,画家が制作をする間に,彼が観察している現象の方はどんどん変化してしまう。印象派は風景画を戸外で短時間で描くことにより,制作に要する時間を短縮して,この一種の矛盾を解消する方向に進んだといえる。しかし,その場合でさえ,たとえばハーバートやハウスによれば,モネの風景画は時間を経て加筆されているという。しかも,モネやピサロにとり描いた対象が何であるかは意味を持たなかった訳ではないことも,タッカーやロイドたちによって論じられている。モダニズムによる先入観を離れて19世紀絵画を見直そうという立場から,人物画においてはドガやカイユボットの研究が盛んとなってきているが,モネの場合には,アイザークソンによる「草上の昼食」研究があるとはいえ,風景画に比べ人物を描いた作品はまだ研究の余地を残している。彼は人物を描くことを断念し,風景画に専念していくのであり,風景画こそ印象派の本質的部分であるという考_ 38 -
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