⑫ 平安時代の不動明王彫像の展開について像学の射程を示す一つの例として,仏教の中に彫刻美学はあり得たか否かの検証•そ⑬ 東洋陶磁における印花技法についてると考える。研究者:慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程山岸公研究目的:不動明王像との展開に関しては,既に佐和隆研「不動明王像の研究」・庄子晃子「不動法と不動明王像」・中野玄三『不動明王像」の先駆的業績があるが,『総覧不動明王』や画像中心の『画像不動明王』のような網羅的図録の刊行を契機に,一層精密な研究のための条件が,近時急速に整いつつある。本研究は,これらの諸成果を踏まえながら,新出・未紹介の遺品を積極的に探索して,日本全国に広範囲に分布する平安時代不動明王彫像の時代的,地方的展開の様相と全体像を可能な限り明らかにすること,これと併行して,東寺講堂不動明王像・同西院不動明王像,同衆院不動明王像をはじめとする基準作・名品について,図像・様式・技法等の諸観点からの再検討と新たな位置づけを試みることを目的とする。このような研究は,単に一尊像についての考察に留まらず,日本における大陸密教美術の受容とその日本的展開,さらには平安時代彫刻の諸様相の検討・解明に重要な道標を築くことになると実作品との相互関係が明らかにされるならば,それは同時に像制作時の仏師と僧侶との交流・役割分担の実相を浮き彫りすることにもつながり,仏教における図像学・の具体相の摘出に,一視座を与えるものと思われる。研究者:東京国立博物館学芸部東洋課中国美術室研究員今井研究目的:印花(型押し)技法は,東洋陶磁において最も普遍的にみられる加飾法の一つであるが,一つの様式が長期にわたって続くこと,大きな様式展開をみせないことなど,分析の対象となりにくい性格から,これまであまり取り上げられることがなかった。また,類型的,没個性的といったイメージから,不当に低く評価される傾向があったといえる。しかし,歴史上のある時点までは,むしろ装飾技法の主流であり,陶エる。さらに,本研究の成果に立脚して,経軌・観想法と敦41 -
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