肖ハ⑱ 上代における請来仏具の研究研究者:奈良国立博物館研究目的:仏具は荘厳具,供養具,僧具など複雑多岐にわたるが宗派や時代やこれを受容した国の国情の違いによって次第に変容することはあっても基本的には古制を逸脱するものではない。わが国の仏具も,当初は朝鮮半島の百済や新羅,後には中国・唐の影縛を受けて形制が確立されたと考えられるが,七・八世紀に比定される遺品で今もって本邦製か請来品かの区別さえ詳らかでない例が多くみられるもその故である。しかし最近における中国や韓国でのめざましい発掘成果や敦煙莫高窟をはじめとする中国仏教壁画の詳細な調査結果は,当時わが国ともっとも緊密な交流関係にあった中国や朝鮮半島の仏具に関する新資料を次々に提示することになり,わが国にもたらされた請来仏具についても多くの示唆を与えてくれる。またわが国での近年の後期古墳出土品の中にも請来品とみられる観音山古墳(群馬県高崎市)発見銅水瓶をはじめ仏具に適う銅銃や銅鉢の類が各地から出土しており注目される。本研究ではこれらの新資料を駆使して伝世遺品と照応する一方,X線等による科学的調査のデータも判断材料とし,請来仏具の特質を把握することにつとめるが,さらに当時の寺院の資財帳など文献資料を参考にこれら仏具の法会儀式に際しての用途についても出来得る限り考察を試みようとするのが目的である。また請来仏具の和風化についても,現在の段階では施されている装飾文様など一部において漠然と使用されているが,請来仏具の系統的分類を行い造形的特色を摘出することができれば,その展開の過程もより鮮明になるであろう。ここでは請来仏具の実体を解明するだけでなく最終的にはその和風化についても察するようにしたい。_ 45 -河田
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