小山真由美他2名① 今後のベラスケス研究は,彼が制作し生活をした舞台,マドリードの王宮(Alcazar)と宮廷社会にその作品がどう結び付くかにあろう。17世紀のスペイン宮廷内の配置や装飾,ヒエラルキーや作法や慣習,また日常の生活ぶりに至るまで,その時代と社会を具体的に論証したい。② 確かに,宮廷関係の原資料は1960年のベラスケス死後300年記念出版においてほぼ網羅されたとはいえ,完璧とは言えない。その後の発見や公刊資料をまとめ,申請者自身の発掘で補いながら,完全な資料集を作成したい。③ 一方,ベラスケスの作品総目録は1963年,LopezReyの刊行後新しいものは出ていない。130点前後の真筆すべてを一年間で見,資料収集するのは不可能であろうが,まずスペイン国内にある作品の写真とデータを収集し,カタログ・レゾネヘの第一段階としたい。日本におけるベラスケス評はそう高いとは言えない。だが,同時代および後代の特に実作者への影響は過小評価してはならない。1999年のベラスケス生誕400年に向けて,この慎ましくも偉大なバロック画家の意義を浮き彫りできればと思う。④ P.A.ガルダ東洋美術コレクションについて研究者:イタリアイヴレア市立P.A.ガルダ美術館東洋美術部門専任担当研究目的:当調査研究の目的は,コレクション自体の持つ意味とも重なると思う。P.A.ガルダコレクションの規模や質を問われれば,それはアメリカの大美術館その他のそれとは比較にならないレベルのものである。しかし,そういった面からは計ることのできない重要な意味がこのイタリアの一地方の小美術館にはあると信じる。それは,①西洋におけるかなり注*早い時期(1874年終了)にされた一東洋芸術コレクションとしての証人的意味があるということ。よってコレクションの特徴を調査によって探ることも調査の1つの目的になる。②イタリアにおける数少ない東洋美術コレクションの一例である(ローマ・ジュノヴァ・ベニスに次ぐ)。これは美術史などの学生はもとより一般にとって,貴重なものの一つとなる。東洋美術品に触れる貴重な機会を与える所となる。イタリアという自国の美術品が非常に豊富すぎて東洋美術の研究や展示という面ではドイツ・アメリカなど他国に比べて遅れている国情の中で,近年一般の東洋-48 -
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