鹿島美術研究 年報第8号
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さらに,著名な中世史家ジャック・ル・ゴッフは,最近,中世人の想像的世界をより多層的・多元的なレヴェルで捉えることで,モデナのドゥオーモの彫刻を,当時の一般的な観者の眼で読み直そうとする試みを提出している。恐らく,今後,ロマネスクのイメージの解釈にとって,より益するものがあるとすれば,それは,神学的・教義的記述との対応や反映を探るという方向よりもむしろ,アナル派をはじめとするいわゆる人類学的歴史学がもたらしている成果をいかに取り込むかという方向から獲られるものが,一層大きいように思われる。これも後の課題となるであろう。後記,紙面の都合上,出典等は割愛せざるをえなかった。今後さらに検討を重ねた上で,ここで確認されたような課題に関して,改めて発表する場を持ちたいと考える。-78 -

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