また,襖絵と絵巻物の構成に共通点が見い出せるということに関していえば,大仙院の花鳥図襖絵にみられるような,水平線を基調としてその上下に花鳥を配する構成なども,水平方行への動線と斜め上下への視線の移動と考えれば,釈迦堂縁起との類似点として指摘することができる。つまり,襖絵と絵巻物という表現形式の差を越えて共通するこれらの表現,画面構成意識を,元信の絵画制作における様式的個性と考えることが可能なのではないだろうか。そして,元信における襖絵と絵巻物との関係は,たとえば花鳥図屏風下絵巻の存在を考え合わせれば,下絵という役割を通した大画面と小画面の関係と考えることもできる。絵画制作において,表現形式の枠を越えて自らの画面構成あるいは空間意識というものの表現に向かったという点に,元信の画風形成を考えるうえでの大きなポイントがあるのではないだろうか。[詳細は,美学会西支部第184回研究発表会(1991年7月6日於同志杜大学)で発表した]-82
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