鹿島美術研究 年報第8号
126/364

⑧ ドイツ・ロマン派における友情画の研究Heidelberg 1952である。本研究はおおむねこれに依拠して,友情画の概念規定と代表de)のひとつとして位置づけられる(Beitr註gezur Motivkunde des 19. Jahrhunderts, 研究者:鳥取大学教養部教授高阪一治研究報本研究の基本的資料はKlausLankheit : Das Freundschaftsbild der Romantik, 的な作例の研究という点を中心に進められた。ただし,共同作品については今後の課題として残されている。本研究の成果については,概略,以下のとおりである。I.友情画についてここでいう友情画とは,たんに友情が元になってうまれた絵画をいうのではなく,友情を主題とする絵画をさすのである。したがって,友情画の研究は主題研究(Motivkun-Mtinchen 1970参照)。ところで先のランクハイトによれば,友情を造形的に表現するとなると,次の三つの方法があがってくる。(1) 直接的方法としては,二人ないしはそれ以上の群像肖像によるもの。う友人たちを出来事画として描き出すもの。すなわち,(1)は友人群を肖像という形で直接,画面に登場させるものである。友情肖像,ないしは,より端的にいうならば,友人群肖像といえるものである。(2)は,シャルトル大聖堂の彫刻群(南北袖廊入口)にみかけられる「友情」や,チェーザレ・リーパの『イコノロジーア』等のエムブレーマタに見出される「友情」がこれにあたり,友情寓意像といえるものである。(3)には聖書中のダヴィデーヨナタンの友情も含まれる。これは写本等にみかけられる挿絵を含み,友情歴史画と呼ぶことができる。さて以上の表現形式からみて,友情画を限定する際,多くの問題を含むのは(1)の友情肖像画の場合であろう。たとえば,17世紀のオランダによくみかけられる群像肖像画は友情肖像画と考えられるであろうか。_こうした問いに答えるには,ひとまず,友情というものの性格を眺めてみなくてはならない。友情は基本的な人間関係のひとつとして見出される友人間の情愛であり,その本質からいえば,たがいに対等の相手として交わる人と人との結びつきである。したがって,友情を視覚的に表現する際には,友人間の結びつきをいかに視覚化するかという(2) 間接的方法としては,寓意像と象徴をもちいるもの。(3) (2)と関連することも多いが,文芸や神話,歴史にもとづいて対ないしは寄り集-102

元のページ  ../index.html#126

このブックを見る