鹿島美術研究 年報第8号
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⑳ 鎌倉時代造像銘記の調査研究うる貴重な資料である。詳細は山本勉「身延•本遠寺伝釈迦如来立像と仏師円覚・覚2.造像記要項には,銘記の位置と年記その他の記載内容の概要を示した。ただし「願3.納入品要項には,品名,その年記等を示した。4.銘記あるいは像の製作に疑問のある場合はその旨を備考に示した。研究者:東京芸術大学美術学部教授水野敬三郎研究報告:従来から引き続き行っている鎌倉時代造像銘記研究の一環として,本年度は千葉県,東京都,新潟県,山梨県,京都府,奈良県に所在する作品14件について調査を実施した。調査はいずれも複数の共同研究者によって行い,それぞれについて詳細にわたるデータ,資料写真がえられた。本年度の調査作品のうち何件かについては,従来報告されていない資料がえられたが,山梨県身延町・本遠寺伝釈迦如来立像はその一つで,頭部内の銘記によって文永3年(1266)法橋覚慶の作であること,覚慶は法橋円覚の子息であることが知られた。円覚には弘長3年(1263)銘の愛知県半田市・常楽寺阿弥陀如来立像,文永3年銘の神奈川県秦野市・寿徳寺阿弥陀如来坐像の二作があることがすでに知られており,これらの像は鎌倉中期の仏師の父子二代間における作風の継承あるいは変容をうかがい慶」(『MUSEUM』482号1991年5月)に報告した。調査作品全件の目録ならびに要項は次のとおりである。鎌倉時代造像銘記の調査研究調査作品目録(平成2年度)凡例1.本目録は,本研究で調査した作品を所在都府県,所蔵者別にまとめて表示し,各像の形状・品質・員数・像高(単位cm),造像記・納入品各要項を掲げ,備考を付記した。主」「結縁者」等とあるのはその各々の姓名等が記されていることを示し,その他これに従う。仏師(製作者)についてはその名を記した。千葉県東光寺:地蔵菩薩像立像,1謳,85.3,木,彩色造像記[像内]建長3(1251),像名,顧意,仏師定阿弥陀仏-170-

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