雛形本の施工説明中の「友禅」にも,糊防染による白上がりと解釈される場合,白上がりに彩色したものや彩色そのものを意味する場合,あるいは墨絵に対する彩色の描絵と思われる場合等,さまざまな用例が見出され,技法上の語義も一定していない。今後は,このような「友禅」が,いつ頃,どのような経緯をもって現在の友禅染の語義へと収敏していったのか,という問題が焦点となるであろう。そのためには数十種ほどの伝存が知られる小袖雛形本の収集と,その丹念な調査が必須であると考える。-188-
元のページ ../index.html#221