鹿島美術研究 年報第8号
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② P. A.ガルダ東洋美術コレクションの整理519点以外の所蔵品,つまり,ガルダの寄贈目録にない当館の東洋美術品については,研究者:イタリアイヴレア市立P.A.ガルダ美術館東洋美術部小山真由美研究報告:イタリア,イヴレア市立,P.A.ガルダ美術館に現在所蔵されている約七百数十点の東洋美術品は,未整理であり,保存状態もかなり悪く,菱慮されるものであった。当コレクションは,その規模は小さいが,由来は古く,1874年に遡る。つまり,当市出身のピエール・アレッサンドロ・ガルダによって収集されたプライベートコレクション,519点が当人の意志によって,市に寄贈されたのが,その元となっている。ガルダの寄贈表明を受けて,市は当美術館を創設し,つまり,P.A.ガルダ美術館が誕生したのである。もう少し,美術品数の疑問を解くために補足説明すれば,前述のガルダのその由来について,はっきりした記録かない。しかし,美術館創立以後に買いとられたり,寄贈された形跡かない事から,旧美術館内,つまり,寄贈時に,やはり,ガルダ自身の希望によって市に買いとられた美術館創立時の館,旧ペネーネ邸内に所蔵されていて,建物と共に美術館に収蔵されたものと考えられる。少し説明が長くなったか,以上の理由から,当館所蔵の東洋美術品は,すべて,1876年,創立時以前に遡るコレクションであると云える。コレクションは,兎も角,市民の努力によって,次,二次大戦などの戦禍などからも守られてきたのである。そして,現在,イタリアでは数少ない東洋美術コレクションの1つ,特に日本美術コレクションとしては,ジュノヴァ,ヴェネチア,ローマ,フィレツェと共に貴重なものの一つである。しかし,この長い時の流れと共に辿った美術品の運命からみれば,戦時中の疎開や移動,分散,そして戦後の長期間にわたる放置,現在地に美術館が定ってからも,イタリア共通の問題でもある,歴史と美しさがあっても古い建物が美術館として利用される時に出てくる常々の設備の不足,さらに,東洋美術品取り扱い知識の不足,等々の中でこれらの東洋美術品は,悪条件下の保存,収蔵状態の中に,長年,置かれてきたのである。現在に於ても,当館建物の老朽化に対する改装,それに伴なって美術品の移動が続いている。約4年前,私が初めてこれらの美術品を見た時,美術品は未整理のみならず,一部極限状態に達していると思われるものも数々あり,非常に心が痛んだ。美術品は故意に危害などが加えられて破損されたようなものはないが,長年の悪条件下で,埃,汚れ,乾燥,日光等のため,金工品,磁器など以外は,美術品の内部よりかなり傷み243-

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