(3) 海外派遣研究者:東京芸術大学美術学部文部教官助手稲葉政満研究報国際博物館協会保存部会(ICOMCC) 東ドイツ:ドレスデン[研究発表]文化財の科学的分析法の小委員会において,私どもで禅入した新しい「微小部X線回折装置」についての発表を行った。X線回折装置は結晶性の物質を同定するためのであり,文化財の分野においても良く使われる装置である。しかし,文化財から採取できる試料の鼠はたいへん少なく,従来の装置では一つの試料を測定するのに30時間程度を要していた。新しい装置では直径0.03mmの試料でも1■ 2時間で測定が終了する。ローマ時代の真珠の分析例や,敦佐莫高窟の壁画試料の分析例を示しながら,文化財試料測定への,新しい微小部X線分析装置の有用性について発表した。[研究の動向]1.有機化合物の分析有機化合物は変質しやすく,一般に分析に必要な試料の絨が多いために,文化財試料の分析に適応されることが少なかった。ここ10年位の分析機器の進歩,あるいは低価格化によって,有機化合物の分析が,いよいよ本格化する気配を感じた。GC-MS,科学研究室に導入されつつある。無機化合物のみならず,有機化合物についての情報が得られるならば,文化財の修理・研究に,新たな発展がもたらされるであろう。展示の際に,文化財は光による劣化を受けるが,その影評を最小限にするために,照度調節を行う。耐光性の違いを考慮しながら,観客が十分に鑑賞できる最低の照度に保つことが,推奨されている。しかし,従来のデータが,若い世代を対象としており,老による視力の低下が反映されていないのではないかという発表があった。保存を考える上では,むやみに総被爆最を増やすことはできない。展示期間の短縮化,展① 微小部X線回折装置(PSPC/MDG)の文化財分析への利用2.環境管理FT-IR,液体クロマトグラフィーといった機器が,通常の分析手段として各国の保存249 1990年8月26日〜31日
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