3.紙資料の保存2.天然ワニスと合成ワニス4.東洋の美術品の修理示日によって照度を変化させて,照度の高い日をもうける等の方法を講じる必要が論議された。洪水によって濡れた資料を凍結乾燥によって修復した事例の報告,シミの漂白法,新しい水性脱酸試薬としてドロマイトの利用,粘着フィルムによる保存処置が,枯着剤等の保存性が低いために,かえって資料を痛めてしまった。そのフィルムをはがした例等の報告があった。一昨年,京都で東洋の美術品の保存に関する会議が国際文化財保存科学会議(IIC)大会として行われた。今回の大会でも,関心の高まりを反映して,小委員会が設立されることになった。今大会への日本からの参加者は10数名にのぼったが,ほとんどが科学者であり,西洋の修理担当者の疑問に適切な解答をする事はできなかった。3年後のワシントンで開かれる大会には,日本の伝統的な修理技術を有する人が参加し,本小委員会の活動に寄与することが望まれる。[修理室の見学]図書館および美術館の紙製資料の修理室を見学した。版画資料のマウント法の変遷は,まさに保存に対する考え方の推移を示しており,興味深かった。国際文化財保存科学会議(IIC)ベルギー.・ブリュッセル1990年9月2日〜7日[クリーニング,リタッチング及びコーティング][研究の動向]1.劣化防止剤の添加油絵最上層のワニスは,紫外線によって劣化し,変色する。退色防止のための,紫外線吸収剤とラジカルスカベンジャーの効果についての発表があった。これらの成果は,さらにそれらの使いやすさと,美的側面からの評価を受けて実用化されていくであろう。数件の発表があったが,相互の比較を行った研究はなく,発表者の好み以上の評価はできなかった。-250-
元のページ ../index.html#283