鹿島美術研究 年報第8号
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日場① 「春草作品にみられる古画の要素—中期前半の作画活動と古画」(3) 第6回研究報告会本年度の研究報告会は,平成3年度の助成金交付式(助成金を交付した出席者50名)に引き続き,昭和63年度と平成元年度の美術に関する調査研究ならびに出版の援助を受けた研究者の中から選ばれた4名の発表者から研究の成果について報告があり,出席した関係者が熱心に聴講した。時:平成2年5月22日午後1時30分〜5時30分所:鹿島建設株)KIビル大会議室出席者:当財団理事,評議員,選考委員,助成者推薦委嘱者,美術史学会会貝ほか,180余名研究報告者と報告の概要報告者:飯田市美術博物館学芸員関根浩子概要:春草の画業を通覧すると,その初期に於いては,狩野派,続いて絵巻を中心とした大和絵研究,その他円山四条派や浮世絵の研究もしたことが推測される。美術学校卒業以降は,いわば自已の画法の案出,実験期であるため,特定の画派との影響関係を指摘することは無意味にも思えるが,この間の歴史画(仏画,故事人物画,風俗画等),茶奔画,朔毛画,及び山水画等にも,その裏に隠された古画の研究の跡,つまり古仏画や,漢画,大和絵両古典絵画にみられる人物,山水,花鳥表現,さらに宋元院体画等の研究の成果が,それとわからぬほどに応用されていると考えられる。さらに欧米この度の研究報告会に於ける発表は,春草作品にみられる日本の各画派,及び東洋古典絵画(主に中国絵画)の要素を拾いあげ,あるいは読み解きつつ,それらと春草芸術との関係を明らかにすることにより,彼の果たそうとした日本画の近代化,新たな日本美の創造にとって,上記古画,及びそこに感得される古代以来の日本人の美意識がどのような役割を果たしたかを考察する試みの中間報告である。-14 -

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