つ。を見学し,同時にそのコンピュータ・プログラムの原理について教示を受けた。様式分析など先史岩面画の研究はこれまで直接的な描き起こしにもとづいてきた。今後,情報処理を通じてより客観的な資料を作成することができ,さらに精度の高い研究が可能となるだろう。たとえば,ある人物像の描き起こしについてであるが,研究所・博物館によっても直接的に作成されてはいるが,教授が画像処理によって得た描き起こしとは異なったところがある。人物像(男性と解釈されている)の性器の直接的な描き起こしでは,おそらく女性研究者によってなされたのであろう,教授の描き起こしよりかなり小さ〈現れている。これは研究者が性別によりある場合には客観的になれないことを示していると考えられ,その点でも画像情報処理の有効性を認めるのである。これまでも,先史岩面画の研究史において主観的な描き起こしが問題になったことも多くあり,今後,客観的な画像情報処理は広く行われることになるだろう。また,使用色の詳細な分析により,これまで同一色と考えられていた色が異なるものと判断できるようになり,それにより重ねがきや制作年代の相対的な決定にも有効な方法となるのである。現時点では教授自身がまだプログラムの精度の改良を試みており,またプログラム・ソフトの著作権問題もあり,すぐには導入できないが,今後より一般的なプログラム・ソフトの開発により日常的に先史岩面画を画像情報処理して研究することになるだろ-276-
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