八和報概遊学以降顕著になるのが,装飾芸術の流派,琳派研究である。これは,春草自身明していることであれば,疑う余地のないことである。春草作品は,その作風の変化により,従来初期,中期,後期,さらに中期を前半,後半に大別して考察されており,ここでもその分類に従うが,本報告ではそれらのうち,中期前半,つまり美術学校卒業後から欧米に遊学するまでの期間に為された作画活動,及び作品の特色と古画との関係を下記の順序で述べたい。中期前半の作画活動と古画一1.古画模写事業と春草2.春草の歴史画(仏画,故事人物画)② 「九州在銘彫刻研究ーーその概要と課題」要:木彫在銘像が姿をみせなくなる。この状況について,どの様に解釈するかも課題のひとつである。次に,鎌倉時代への展開のなかで,平安仏に鎌倉新様式を加味したと考えられる作品が見受けられるが,それも十三世紀のはじめに姿を消し,あとは畿内から送り込まれてくる仏像で占められるようになる。しかしながら,九州への奉渡の時期が造仏の時期であることを確かめうる史料に乏しい。そのような波及のなかで,運慶五・六代を名乗る康誉・康俊らの作品が九州へ奉渡され,また,「湛」字を有することでグルーピングできる仏師たちの作品が,九州に点3.春草の花奔鉗毛画と宋元院体画:九州歴史資料館学芸第一課長を主目的とし,九州彫刻史の時代的地域的な特質の把握に資することができればと願っている。をたどりながら,九州の仏像彫刻の二,三の問題点と課題にふれたいと思う。ぎからであるが,それも十二世紀後半には平安様式の九州在銘彫刻研究は制作時代の判定規準を得ること今回の報告では,九州の古代・中世の在銘仏の概略いま判っている九州の在銘木彫像は十一世紀半ば過15
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