鹿島美術研究 年報第8号
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② 第9回国際博物館会議保存科学部会報告:第9回ICOM-CCは,平成2年(1990)8月26日から31日まで東ドイツ・ドレスデ計160の研究発表とポスターの展示が行なわれた。出席者:東京国立文化財研究所保存科学部生物研究室長新井英夫1.はじめに昭和59年(1984)の7回目の会議国際博物館会議保存科学部会(以後ICOM-CCと略記する)は,において第25回分科会として「生物劣化と制御」の設置が提案され,昭和62年(1987)9月のシドニーにおける第8回ICOM-CCで「生物劣化と制御」の分科会が正式に発足した。平成2年(1990)8月にドレスデンで開催された第9回ICOM-ccは,生物劣化と制御の分科会としては2回目である。筆者は,昭和45年(1970)以来東京国立文化財研究所で生物研究室を担当して今日に至っている。しかし,文化財保存科学の分野で生物学を専門とする研究者は,いずれの国でも少ないのでこれまで生物劣化の分科会を組織できなかった。従って,筆者らの国際交流の場は,英国に本部のある国際生物劣化学会の主催する国際生物劣化シンポジウムのみであった。者は,昭和46年(1971)から同学会の会員となり,同年にオランダのルンテルンで開催された第2回シンポジウムヘの参加及び昭和59年(1984)米国のジョージ・ワシントン大学での第6回シンポジウムで研究発表した。それが,ICOM-CCは,昭和62年(1987)の第8回ICOM-CCから,生物劣化と制御を第25分科会として取り上げたので,今後はこの分科会に積極的に参加してこれを発展させなければならないと考えている。その理由は,ICOM-CCが,文化財の保存と修復の科学的研究に強い関心を寄せる学芸員,修復技術者及び科学者の集う会議なので,同会議の26の分科会に参加する約400名は,殆んどの人が文化財の生物劣化と制御にも関心を持っている。しかし,国際生物劣化学会は,各種の材質の生物劣化を取り扱う生物学者の国際シンポジウムを主催し,そのなかに少数の文化財関係者が参加する分科会が存在している。ところが,この学会の文化財以外の材質の生物劣化を研究する生物学者は,文化財について関心のない人が大部分と言っても過言ではない。それ故に,筆者は文化財保存科学における生物劣化の国際会議は,参加者の大部分が関心を持っているICOM-CCがリーダーシップをとるべきと考えている。ンの文化会館で,世界の39カ国から約400名が参加して開催された。26の分科会で,総-278-

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