鹿島美術研究 年報第8号
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① アメリカ近代美術の礎—ァーザー・ウエズリーダウについて一一研究者:横浜美術館学芸係長天野太郎研究目的:この調査研究の目的は,第1に,アメリカにおいて,いわゆるジャポニズムがどう理解され,受け入れられたかを知ることにある。そして,その本格的なジャポニズムの紹介を果たしたダウを通じてより具体的にアメリカにおけるジャポニズムを解明したい。また,ダウの影聾を受けた作家達が,アメリカの抽象表現の担手となっていることから,主要な作家を通じて,どういった点において決定的な影響を受けたかをさぐってみたい。この事は,アメリカの美術思潮におけるモダニズムとダウの位置を明らかにするものと思われる。また,ダウ,フェノロサの日本美術の再評価が,岡倉天心をはじめとする当時の,日本美術界に1つの大きな指針を与えたことについても,この際,検証する必要があると考える。② 鹿子木孟郎とジャン=ポール・ローランスー鹿子木孟郎調査委員・第2次調査研究者:三重県立美術館学芸員研究目的:鹿子木孟郎がフランス留学中に入門した,パリの私立の画塾アカデミー・ジュリアンは,19世紀末から今世紀初頭にかけて最も規模が大きく,多彩な授業内容をもつアトリエであった。彼の師事したアカデミーの教授ジャン=ポール・ローランスは,第三共和制時代の最後の歴史画家といわれ,ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ,バスティアン=ルパージュと並んで当時最も影響力のあった画家である。アカデミー・ジュリアンに入門した日本人画家には,鹿子木を筆頭に満谷国四郎,中村不折をはじめ安井曽太郎,梅原龍三郎や彫刻家の荻原守衛らがいる。また鹿子木孟郎は,ローランスのみならず,世紀末象徴主義の画家ルネ・メナールにも影響を受けている。メナールは,アマン=ジャンやシャルル・コッテらとラ・バンド・ノワールという芸術家コロニーをつくっていた画家で,新印象主義と象徴主義を採り入れた個性的な作品で知られている。従来,アカデミスムを基軸とした明治期の洋画研究においては,黒田清輝と東京美研究目的の概要:荒屋鋪透-24 -

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