④ 宝冠阿弥陀如来像の研究研究者:東京国立文化財研究所研究員井上一稔研究目的:阿弥陀如来像は,日本においても最も多く造像された尊像であるが,その中に平安時代から江戸時代に至るまで宝冠阿弥陀如来像と称される像がみられる。これまでは,宝冠阿弥陀如来像は通形阿弥陀如来像に対する異形像として,いわば特殊なものとして考えられてきたが,平安期より江戸期に至るまで継続して造像されている点だけを考えてみても,決して特殊なものとして軽々に扱われる存在でなく,日本の阿弥陀如来信仰を形成する大きな一要素として見直さなければならない。本研究の目的は,いくつかのタイプの宝冠阿弥陀如来像に注目して,その変遷過程と原因を追求することから,阿弥陀如来信仰の中でどの様な位置を占めるのかを考えることにある。これは平安後期以降,浄土思想との関連で説かれることの多かった阿弥陀如来信仰の新たな一面を発掘する事につながり,日本仏教史及び思想史上の重要なテーマである阿弥陀如来信仰の解明にも仏教美術史からの貢献が期待できる。⑤ 江戸期における意匠の諧譴性の系譜研究者:たばこと塩の博物館学芸員岩崎均史研究目的:江戸期における美術工芸の作品で,諧誹性をモチーフとして制作されたものの評価は,正当な解釈と評価がなされているとはいえず,むしろ軽視されているのが現状である。計画の要約で記したとおり,それら文化所産の多くは,ただ単に奇を街ったり,ふざけて制作されたものではなく,ある種の法則性に則り製作されたものが見られる。その法則性の一つの拠として当時の庶民感覚の中心的存在であった“戯作精神”との関連が考えられ,文学の“戯作”との関連がかなり深かったものと推測される。江戸期には,それ以前とは比べものにならぬほど,さまざまな多くの事象と要素が複雑に関連し合い文化を形成しているが,その研究・究明は従来比較的なされていない。本テーマもそのひとつであり,これを調査研究することにより,より総合的な江戸文化及び江戸期美術の究明に寄与できることであろう。また,これらモチーフの検討,系譜の究明,`見立絵”‘判じ絵”などの整理をとおして,文学,芸能,民俗,風俗等他分野との関連の様相を明確にし,それらの分野と26 -
元のページ ../index.html#42