の共同研究の基礎となりうるまでの成果を求めようと考えている。いずれ,これら他分野との共同調査研究により,さらに内容と成果の充実が期待できる。⑥近世土佐派の作品研究ー中後期における基準作の確定一研究者:京都市立芸術大学美術学部非常勤講師岩間研究目的:かつて江戸時代における土佐派・狩野派などのアカデミズムについては,粉本主義に陥り,他の画派に比べ独創性に乏しいとする評価が多く行われていた。しかし近年,狩野派に関してはその組織力や時代ごとに優秀な絵師を生みだした点について再評価する傾向が現れている。それに対し,土佐派については今日まで系統だった研究が行われておらず,等閑視されたままである。その結果,作品紹介も少なく,個々の絵師の作風も解明されていない。さらに近世における絵所領職の実態については,ほとんど解明されていないのが実状である。従って近世土佐派絵画の調査研究は,資料の収集という最も基本的な作業においても多くの新しい知見を得ることができると思われる。まず各絵師の画跡が判明し,基準作を確定できる。基準作の検討により,今日まった<未着手である個々の絵師研究が可能になり,作風が明確になる。画類や様式を分類検討し,肖像画,障屏画,物語絵巻などさまざまな絵画における様式と技法が明らかになる。こうした作業から土佐派の全体像が明らかになり,一つの画派としての共通性,普遍性を浮き彫りにすることができる。その結果,近世やまと絵に対して漠然と抱かれている美しくひ弱で,個性に欠けるというイメージが,おおいに改められるであろうことは,現在収集した査料類からも容易に推測され得る。また資料の中には,書き込み,付属資料,粉本などから制作状況や依頼者の明らかになるものも含まれている。そうした資料を整理することにより,禁裏絵所預職の実像や,宮廷行事や宮廷文化に果たした役割などが明らかになる。また他の画派の絵師や文化人とも交流しているため,単に土佐派研究のみに終わらない成果が期待できる。これらの研究成果を公表することにより,近世土佐派に対する絵画史上の評価が改められるならば,各地の美術館,博物館,個人に収蔵されている土佐派の作品の掘り起こしが行われ,新たに紹介されるなどの動きも期待される。27
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