鹿島美術研究 年報第8号
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⑦ 国画創作協会の活動に関する研究⑧ 二神型宗教造形の分布と系譜に関する研究研究者:笠岡市立竹喬美術館学芸員上薗四郎研究目的:本調査の当面の作業である国展出品作家全員の経歴確認により,国展参加の経緯と制作活動の実態が明らかになってくるであろう。これにより,国展創立会員(小野竹喬榊原紫峰,土田麦傷村上華岳,野長瀬晩花)以外の若手画家たちに関するこれまでの断片的経歴が整理され,国展との具体的な係わりが判明するであろう。さらには,経歴調査の徹底により,これまで未確認であった国展時代の作品が再発掘され,国展11年間の作風変遷が画家毎に明瞭になるであろう。また,これまでほとんど着手されていなかった国展主要会員(竹喬,麦倦,晩花,入江波光,吹田草牧)の渡欧時における具体的な動向を確認することにより,国展前期の全体的な洋画への志向性が,国展後期の東洋的古典へと回帰する現象の根本的要因が明らかになると思われる。さらには,当時の日本画家としては珍しく長期にわたって欧州に滞在して制作活動を続けた土田麦倦の西洋絵画受容の過程を追跡し,近代の日本画家が東洋と西洋の間で微妙に揺れ動く姿をその典型として把握したい。これらの作業を通じて,国展調といわれる個性的な画風が生まれてくる背景を明確にし,経済的好況のうちに設立され,経済状況の悪化と杜会不安のなかで解散するにいたった国展の存在を,大正という特殊な時代背景のもとで位置付けてみたい。これによって,これまで設立会員と限られた数人の参加者だけで語られてきた国展の全貌が明示され、近代美術史における国展の存在意義がより明確なものになってくるであろう。研究者:岩手県立博物館学芸第一課長大矢邦宣研究目的:昭和56年に岩手県内に所在する懸仏の悉皆調査を実施し,264点の懸仏を調査したが,その結果,総数の4割を占める鋳鉄製懸仏の著しい特徴として二神型の懸仏の存在が明らかになった。懸仏においても彫像と同様,独聰または三尊の形式をとるのが普通である。それだけに二神型懸仏の存在は注目さるべきものであった。その後,二神型懸仏は青森県においても発見例が増加している。また,岩手県内の山神像にも二尊一対型・ニ神型のものがみられるほか,東北地方にはオシラ神など明らかに二神型のも-28-

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