⑬ 18世紀フランスにおけるフランドル・オランダ絵画のコレクション18世紀フランス絵画と17世紀フランドル・オランダ絵画との密接な関係は,これま18世紀フランスにも及んでおり,本研究に関連する二,三の成果を生んでもいる。しけではなく,解説も概括的な指針が示されているに過ぎない。ブレイクにしては珍しくこの大部の画集を1年で仕上げていること,その熱狂を考慮にいれると,また,この作品の前後で彼の水彩画の技法が著しい変化を遂げ,円熟の方向に向かい始めることを考えると,この作品の意味は,技法的な観点から,内容的な観点から(ブレイクの読解のありようを理解するために),歴史的な観点からと,多様な視点から検討が加えられなければならない。そのためには,まず,この水彩画集を直接観察することが一つの要点になる。また,エンブレム・ブック等に見られる伝統的図像との比較あるいは先行する時代もしくは同時代独特の図像等との比較研究もその要点となる。その結果,一般にブレイクの芸術・思想の転回点である1800年前後に至る時代の作品としての『夜想』の,技術的な問題点,方法的(あからさまに寓意的である)な問題点,思想的な問題点が浮彫りにされ,解明されるだろうと思われる。研究者:帝塚山学院大学助教授島本研究目的:でしばしば指摘されてきたところである。制作の側からは,ワトー,シャルダン,フラゴナールを始め,ほとんどの画家が,何らかの形で,北方からのインスピレーションを受けているといって過言ではない。また,受容という面を考えてみても,たとえば,上記の画家たちの作品判断の基準として,17世紀のフランドル・オランダの作品があったことは間違いない。このように,18世紀フランス絵画に深い影聾を及ぼした17世紀のフランドル・オランダ絵画だが,それでは,そうした絵画が,フランス,特にパリにおいてどの程度浸透し,また,どのような形で流通していたのかという実態は定かでない。この問題に関して,これまで,個別的なコレクションの研究,あるいは,レンブラントの受容研究などは散発的に行われてきた。また,コレクションに対する近年の学術的関心は,かし,本研究のような,17世紀フランドル・オランダ絵画の浸透の実態を解明する試みは,まだ総合的な形で行われたことがないはずである。いくつかの困難な問題を含-39 -浣
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