んではいるが,その解明は可能であり,これから予想される成果は,18世紀フランス絵画研究の新たな材料となるはずである。⑭ 鎌倉中期の善派仏師の研究研究者:奈良県教育委員会事務局文化財保存課研究目的:鎌倉中期の奈良地方は南都旧仏教による戒律復興運動の動きのなかで,善円,善慶,善春の善派仏師による造像活動が注目される。東大寺,興福寺などの学僧を中心とした造像活動から始まった彼らの動向は,西大寺中興の祖叡尊の知遇を得て西大寺及び叡尊と関わりのある寺院を中心に活躍した。善円はかつて円派仏師の系統にあるといわれたが,近年は鎌倉初頭の東大寺興福寺の復興期に小仏師として参画した。慶派仏師とも異なる奈良地方仏師にその出自を求める仮説が唱えられている。さらに,善円と善慶とは同一人ではないかとする見解が発表され,これを裏付けるかのように新たに発見された薬師寺地蔵菩薩像(善円作)の納入願文によって二人の生年が一致することがわかった。加えて筆者も関わった奈良県指定文化財業務の中で,西興寺地蔵菩薩像の再評価が試みられ,善慶の作風の理解が深まりつつある。以上のような善派仏師の作例の再検討は作家の個人様式の展開の幅,及び工房制作による作風の変遷の問題を考える上で有効な視点を提供すると考える。これまでの善派仏師の作例の再評価及び叡尊関係寺院に伝わる未紹介の善派系作品の検討を加えながら,あわせて南都における鎌倉中期彫刻の展望を試考する。⑮ フランス・プレ・ロマン主義およびロマン主義における風景画研究者:国立西洋美術館主任研究官高橋明也研究目的:ナポレオンの没落からルイ=フィリップの退位に至る時期におけるフランス・ロマン主義の存在自体を疑問視する人はまずいないと思われるが,ラマルティーヌ,ユゴー,ミュッセ,デュマなどの文学の領域に対する豊富な研究に較べると,これまで美術の分野における見るべき成果はきわめて少なかった。ドラクロワ,ジェリコーとい鈴木博-40 -
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