⑮ 大阪における異形式仏像の研究研究者:堺市博物館主任研究員研究目的:大阪は,京都府,奈良県,滋賀県に比べて,仏像は量的,質的に劣るかも知れないが,珍しい異形式の作品が多いという印象を,過去15年間の調査を通じて持っている。例えば,堺市博物館蔵の檀像観音菩薩立像(重文・円通寺旧蔵)は類品のない飛鳥時代の作品として注目されているものであり,また考恩寺の諸仏は,近年,稚拙な地方作という評価から,その異形式様式が注目された結果,再評価されてきている。異形式の像は,平安時代以降もまま見受けられる。こうした異形式の仏像を生み出した背景として,竹内街道などを通じて大和へ至る大陸文化の門戸であったという地理的環境が想像されるが,異形式仏像の全国の類品を調査し,そのうえで綿密な研究を行って,その問題を解決する段階までには至っていない。本研究では,大阪というー地方(と言っても五畿内のうち三国を含む先進性を持つ)の異形式仏像の問題を考察することによって,大阪の仏像の持つ特色と背景を明らかにすることを目的としている。⑯ 詩画軸の研究研究者:筑波大学大学院博士課程芸術学研究科芸術学専攻研究目的:現存作品等から明らかに詩画軸は室町時代を表舞台としてくりひろげられていた絵画形式であるといえる。問題の所在としても指摘したように室町水墨画の周辺,すなわち朝鮮側の状況を把握することが必要である。それを通じて室町詩画軸の持つ国際性の面をほりさげていき,また多角的な考察により室町絵画史における新たな位置づけが可能になるのではないかと考えられる。朝鮮側に詩画軸の存在があったとしても,特に室町と李朝には絵画観における特質の違いがあった。すなわち,室町における精神的欲求の充足,それに反し,李朝における実利面での活用という点で,両国の絵画のへだたりが生ずる。だがそれは,結果として語られることであって,そこに到る過程とは少なからぬ類似点をふまえる必要がある。原忠雄李元悪-55-
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