⑰ 涅槃変相図及び仏涅槃図の研究研究者:徳川美術館研究目的:平安時代から鎌倉・南北朝時代にかけての絵画史を考える上で,常に平安時代以来続く伝統的様式と鎌倉時代に現われる新様式,さらに,これらの様式に影響を与えた宋画の受容という大きな様式の流れを把握することが必要となる。仏教絵画史に於ては,こうした宋画の受容は鎌倉前期からみられ,詫磨勝賀をはじめとする詫磨派,俊賀や恵日房成忍などの高山寺・明恵上人周辺の画師,東大寺復興を果した重源や泉涌寺開祖の俊初などの入宋僧らが大きな役割を担ったであろうことが指摘されている。これらに加えて宋画の受容が最も顕著にみられる分野が,仏涅槃図であり十六羅漢図であるといわれている。仏涅槃図及び涅槃変相図は現存遺品が極めて多く,しかも,同ーテーマの中に,中国や朝鮮半島で制作された図やそれを模写したような図や日本国内での伝統様式による図が混在しており,宋画の受容という大きなテーマの解明に好資料であると考える。また,様式だけではなく,大陸の仏教図像の日本仏教絵画に与えた影響という点でも検討が望まれるであろう。涅槃変相図及び仏涅槃図の研究は,日本絵画史における中国・朝鮮半島の絵画の与えた影轡の一端を探る上で意義深いものと考える。渡辺志-56-
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