⑤ 聖なる空間の東西研究者:九州大学工学部教授前川道郎ほか3名研究目的:宗教芸術や宗教建築の研究はこれまで,美術史と建築学の領域で,また東洋や日本と西洋の両地域について,個々に独立して行われて,それぞれ厚い蓄積と顕著な研究成果を得てきているが,建築と美術西洋と東洋のひろがりにおいて,包括的・統合的視野に立った研究はそれほどなされてきてはいない。そこで本研究は異なった専門分野の研究者がより集まって,諸芸術を統合する聖なる空間の表現と意味という視点から東西の中世芸術について比較論的に共同研究を行おうとするものである。その際,とりわけフランス初期ないし,盛期(12■13世紀)のゴシック建築の空間を問題の中心に据えて,浄土教空間など日本中世の聖なる空間の現われとの比較において,西洋的な聖なる空間の意味を探究したい。西洋中世の教会堂の空間も日本中世の宗教空間もともに象徴的空間として規定されようが,とくにゴシックの空間が超越的性格にかかわるのに対し,浄土教建築の空間はより感覚的であることは,否めないであろう。この共同研究は東の聖なる空間との比較において西の聖なる空間の特質を考えることを方法の一つとしている。聖なる空間は建築と絵画(ステンドグラス),彫刻その他の工芸品との綜合芸術であり,かつ宗教的理念に支えられた聖なる意味の現われ(聖なるものの顕現)としての空間であるから,建築学的研究のみに偏してはその本質を捉えることができない。したがって美術史家のみならず哲学者あるいは神学者との共同研究が要請される。しかしながら,そのような研究は,とりわけ中世哲学者も加わっての研究は,これまでほとんど行われていない。本研究はかかる統合的研究への試みである。-60
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